将来は日本に帰ってきて、生活基盤を築きたいと考えています。その意味では、帰国子女枠で大学受験をするのはひとつのチャンスと考えています。ただ、ひとたび日本の大学に進学すると、反対に海外に出にくくなるのではと心配しています。せっかく身につけた海外での教育や語学力が活かせなくなってしまうのではないだろうかという不安があるのですが、どうでしょうか。
同様の悩みを抱えた生徒を毎年見ています。こうした状況での不安や迷いを解消できる助けとなるような完全な回答はないというのが正直なところです。
ただ、とりあえず現時点での答えとしては、日本の大学進学を勧めることになるのだと思います。
理由は
1.大学生活の目的が学習と新たな出会いとにあるという多くの人の考えに従えば、日本での生活を将来に想定しているあなたの場合、共に社会の第一線で活動することになるであろう人と親しく知り合う機会が圧倒的に高い日本の大学の方がよいでしょう。また、大学入学以前にも、あなたと同様の境遇を経てきた帰国生と親しく知り合う機会があるかもしれず、そこでは他の日本人とも、外国人とも共有できないような深い理解・共感を得られるかもしれません。
2.日本の大学に進学しても、これまで海外で学んだことが無駄になるはずがありません(無駄になるのだとしたら、それはいったい何を学んできたということになるのでしょうか)。それに、今は日本の大学から海外に留学する機会も非常に増えていることを考えると、いったん日本で、または日本語で、これまで経験してきたことを捉え直したり、英語も整理し直したりすることは、その後ふたたび海外で学ぶうえでの非常によい土台づくりになるだろうと思います。
といったことが挙げられます。ご自分が大学生活に何を求めているのかをゆっくりお考えいただくのがよいでしょう。
2006年3月にいただいたご質問への回答