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2020/07/17 号

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【高校生・大学受験生対象】
JOBA 通信 2020/07/17 号
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このメールは、JOBAの講習会を受講してくださった高校生の生徒の皆様、高校生
メールマガジン購読のご登録頂きました皆様にお送りしています。

保護者の皆様におかれましては、このメールの内容をお子様にお伝えいただければ幸
いです。

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<今回の特集記事>
■ 大学受験ワンポイント情報⑧
 入試問題分析:上智大学総合グローバル学部

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JOBA本部校・大学受験科の石井昭彦です。

梅雨空の時節、JOBA本部校ではついに「大学入試直前講習会・第1期」が始まりまし
た。

COVID-19により教室授業実施が危ぶまれましたが、無事にスタートがきれたことに安
堵しています。(昨今の状況をみるとけして安心はできないですが・・・)

受験生と接していると改めて受験準備の煩雑さがわかってきます。

現代文要約指導、小論文作成指導、時事知識、頻出テーマ解題などなど、大学入試小
論文の奥深さを生徒に理解してもらうことが日々授業の目標です。

授業以外には、志望理由書の作成サポートも行っています。面接試験につながる大切
な資料ですから、手抜きはできません。

またIBDPのEE要約やCASの報告書も講習会担当である私の大切な仕事になります。

いまだ日本に帰れず受験準備を進めている海外生も少なくないでしょう。

とくに11月・12月卒業の海外高校生は、最終学年の試験勉強とも重なり「孤独な闘
い」を続けていることと推察します。

受験は本来自分自身との闘いであり、それを遂行してこそ成長するものですが、アド
バイスやサポートが必要であればJOBAに相談してください。

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■ 大学受験ワンポイント情報⑧
  入試問題分析:上智大学総合グローバル学部 2020年度入試問題から
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「比文(ひぶん)」の愛称で親しまれた上智大学比較文化学部が国際教養学部に改組
されたのは2006年のことです。

今では早稲田大学国際教養学部と並び、海外高校生に人気の高い学部として定着して
います。

それから8年後の2014年に上智大学総合グローバル学部は誕生します。

国際教養学部と同じく、1学部・1学科の総合グローバル部は国際関係論と地域研究の
双方を体系的に学ぶことを教育目的に据えています。

総合グローバル学部では「グローバル化」を正負の側面からとらえ、地球規模の問題
に対する解決能力が求められます。

そのため、海外就学経験者(帰国生)入試の小論文では、グローバル化のとくに負の
側面に目を向けた課題文が出題され理解と意見(問題発見とその解決)を求められま
す。

最近3年間では次の課題文が出典として用いられています。

2018年度:吉見俊哉『「文系学部廃止」の衝撃』2016年 集英社新書 152-154頁

2019年度:ブランコ・ミラノヴィッチ(立木勝 訳)『大不平等』2017年 みすず書房
11-13頁

2020年度:伊藤るり、小々谷千穂、ブレンダ・テネグラ、稲葉奈々子「いかにして『
ケア上手なフィリピン人』はつくられるか?」伊藤るり、足立眞理子編著『国際移動
と<連鎖するジェンダー>』作品社 2008年 118-119頁

どの年度も書籍の2ページから3ページ分の文章が抜粋されています。試験時間60分・
800字の条件から考えれば、決して長い分量ではありません。

課題文型の例にもれず、文章全体や文章中のキーワードに関する的確な理解を前提に
解答者自身の意見提示や説明が必要となります。

以下、2020年度入試問題を例に入試問題分析を進めます。

最近3年間ではもっとも課題文の分量が少なく、設問を入れても1000字に足りない程
度です。

課題文に先立って書かれた問題文には、グローバル化に関する2つのキーワード(「
生産領域のグローバル化」と「再生産領域のグローバル化」)が登場し、後者に着目
したかたちで課題文が示されます。

最後に次の問いが投げかけられます。

【問い】
今日の社会が直面する「グローバルなケアの連鎖」について、文中の①再生産労働を
めぐる国際的な不平等レジームの形成、および②再生産労働の「国際商品」化の概念
を参考にしながら、具体例をあげて説明しなさい。

<解題>
「グローバル化(globalization)」という用語に鈍感な受験生はまずいないと思い
ます。グローバル化に対する説明=「人、もの、資本の国境をこえた移動」も受容で
きるはすです。

ではこの説明に登場する「人」とは誰を指すのでしょうか。見るからに高価なスーツ
をまとったビジネスパーソンだけでしょうか。

現代社会では、実に多くの人びとが国境を越え、移動先の労働力として貴重な存在に
なっているといっても過言ではありません。まずはこの労働力としての人の移動(グ
ローバル化)に着目する必要があります。

さらに課題文や設問を理解するためには「再生産領域」という言葉についての理解が
鍵になります。

課題文に示される再生産領域とは、再生産労働(Reproductive Labor)とほぼ同義で
「生命や社会の再生産に関わる労働」、具体的には家庭内における子供の育児、家
事、病人や高齢者の介護などを指す言葉です。

今日の社会で、外国人女性労働者の多くが移住先の再生産領域を担う国際労働力とし
て定着しながらも、そこに男女や人種・民族をめぐる差別や偏見を増幅させる図式(
課題文で言う「不平等レジーム」をもたらすことを課題文では問題提起しています。

問いの最後には「具体例をあげながら」という条件がつきます。

みなさんの身近に、どれだけの外国人労働者が存在しているかを的確に把握すること
により労働の国際商品化を説明するとともに、その中でもとくに外国人女性が具体的
にどのような労働を担っているかに目を向けているかが問われています。

少子高齢化が進行する日本では、介護現場への外国人労働者受け入れが制度化されて
います。その中でもEPA介護福祉士候補として在留資格を認められている国であるイ
ンドネシア、フィリピン、ベトナムからは多くの女性が来日し介護現場で働いていま
す。

介護分野における外国人女性の活躍は、表面的にはグローバル化が進んでいる一つの
現れに思えるかもしれません。しかしながら女性であることから再生産領域に受け入
れの場が限定されるのは、ジェンダー・バイアスのグローバル化にほかならない。

こうした視点をもって、論を進めることが2020年度入試の小論文問題では求められて
いると言えるでしょう。

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